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ポリエステルってどんな繊維?技術革新で進化を遂げる化学繊維・ポリエステルの特徴

ポリエステルってどんな繊維?技術革新で進化を遂げる化学繊維・ポリエステルの特徴

衣服やファッション小物、シーツやカーテンなどの寝具・インテリアなど、さまざまなファブリック製品に使われるポリエステル。ナイロン・アクリルとともに3大合成繊維のひとつに数えられ、私たちの生活に欠かせない繊維のひとつですが、実は世界で最も生産量の多い繊維だと知っていますか?

下の表は、糸ベースでの繊維生産の推移を経済産業省「生産動態統計」のデータより石油化学工業協会がまとめたものです。2019年は合成繊維(ポリエステル)が全体の28%を占めています。また、世界で見ても、天然繊維よりも化学繊維の生産が増加していて、特にポリエステルの生産量は圧倒的です。原料が手に入りやすく、簡単に製造でき、価格を安く設定できるため、世界中で流通しているのです。

ポリエステルの名前を聞いたことがない人はいないかもしれないほど、普段から身近にある繊維素材ですが、ポリエステルは何から作られているのでしょうか?

↑ グラフと表はクリックするとポップアップで拡大表示されます。

天然資源から作られるポリエステルが、天然繊維ではないワケ

綿や麻のような天然繊維は、自然界に存在しているものを加工して作り上げた素材です。

現在のポリエステルは、石油が原料です。石油は天然の資源ですが、ポリエステルは天然繊維ではありません。

なぜなら、石油から科学的に合成して作られた繊維素材だからです。その繊維が自然界に存在するかどうかが判断基準となっていて、ポリエステル自体が自然界に存在しないため、化学繊維(合成繊維)と呼ばれているのです。

このポリエステルが誕生した背景には、同じ化学繊維のナイロンが関わっています。

ポリエステルの組織断面イメージ

ポリエステルは多価カルボン酸と多価アルコールを脱水縮合して、エステル結合を形成させることによって合成された高分子化合物の総称のことです。

「ポリ(poly)」には大量という意味があり、たくさんのエステルが重合しているという意味です。多価カルボン酸と多価アルコールの組み合わせを選択することで、様々なポリエステルを合成することが可能です。

ちなみに石油からしか作れないと思われがちなポリエステルですが、東レは地球環境に優しいエコ素材として、植物由来ポリエステル繊維の開発を進めています。現在はサトウキビ廃糖蜜30%・石化燃料70%が原料の割合ですが、植物由来原料100%を目指しているそうです。

ポリエステルは高分子化合物の総称のため、結合の仕方によっていくつかの種類がありますが、よく使われているのは数種類です。

特に代表的なポリエステル繊維は「PET」と呼ばれるもので、ペットボトルの原料としても有名です。紡績方法を工夫して糸の形状に変化を与えたり、製造過程で他素材を練り込むことで、天然繊維にような風合いや、優れた機能性を持たせることができるため、さまざまな用途で広く使われています。

  • PET(ポリエチレンテレフタレート)
    原料価格が安く、ペットボトルの原料として有名で、ポリエステル繊維の代表格もこのPET繊維。PETを高温で融解し、長い繊維に紡ぎあげたものです。PETを溶融して鋳型へと流し込んで成形(溶融加工)すると、飲料用のペットボトルなどのプラスチックとして使用できます。ポリエステル繊維を使った衣服の約半数がPET繊維と言われるほどポピュラーで優れた性質をもち、耐熱性・強度・染色性に優れ、特殊な機能を持たせることもできます。ペットボトルと同じ構造であるため、ペットボトルを再利用したリサイクル衣類も、最近話題になっています。
  • PEN(ポリエチレンナフタレート)
    PET繊維よりも強度が高く、弾性率、紫外線バリア性、耐加水分解性、熱酸化抵抗、ガス透過性に優れ、酸素や水蒸気が透過しにくいため、フィルムとして利用されることもあるポリエステル繊維です。
  • PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)
    柔らかい肌触り、高い伸縮性、形状安定・形状記憶性能といった特徴があります。
  • PBT(ポリブチレンテレフタレート)
    伸縮性に優れているため、高機能なスポーツウェアや水着に使用されたり、高い耐塩素性やUV特性を持っていることから水着にも使用されることがある素材です。

ポリエステルの歴史は浅いけれど、進化は速い

アメリカのデュポン社によってナイロンが開発されていた1931年頃、「脂肪族ポリエステル」という繊維を開発しました。この「脂肪族ポリエステル」をもとに、1941年頃にイギリスのキャリコプリンターズ社が「テリレン」というポリエステルのもととなるポリエチレンテレフタレートを開発し、1955年から工業生産を開始しました。また、アメリカでも1946年にデュポン社もこの繊維の優秀さに目をつけ、特許を取得して、1953年から「ダクロン」として工業生産に入りました。

日本では東レと帝人がいち早く製法ライセンスを受け、1958年に「テトロン」として国産化を行いました。

もともとは天然繊維である綿や麻に似せて開発されたポリエステルは、製造技術が進化して繊維はより細く、しなやかに柔らかくなり、シルクのような美しい光沢を再現したポリエステル繊維も製造されるようにもなりました。現在はハイテク技術を応用し、超極細繊維(マイクロファイバー)、異形断面繊維、中空繊維、異収縮混繊維など、さまざまな種類のポリエステル繊維が開発されています。

コロナ禍の今だと、抗菌素材を練り込んだポリエステル繊維に注目が集まっています。合成繊維だからこそ、技術開発が速く、様々なメリットを意図的に作り出すことができ、時代のニーズに合わせた繊維が誕生しやすいのだといえます。

ポリエステル(Polyester)の特徴

ポリエステルは種類によってそれぞれ特徴が異なりますが、ポリエステルの基本的な特徴をご紹介します。

特徴① 耐久性
非常に強い繊維で濡れても強さは変わりません。合成繊維全般にいえる特徴でもありますが、とにかく丈夫です。天然繊維でできた薄くて軽い生地だと、引っかけたり引っ張られると簡単に伸びたり破れたりします。ところが、ポリエステルでできた生地は強度が高く、耐久性があります。お子さんが洋服を強く引っ張ってしまっても、心配ありません。

単に生地が強いわけではなく、以下のような耐久性の特徴があります。物性面で取扱いがしやすいから、保管も容易です。

    • 生地の縮み・伸びに強い
    • 酸に強い
    • 化学繊維の中では熱に強い
    • 摩擦・摩耗に強い
    • 変形・型崩れが起きにくい
    • 寸法安定性がよい
    • 化学物質や薬品に強い耐性がある
    • カビや虫害を受けにくい
    • 汚れに強い

この耐久性によってファッション業界はもちろん、インテリアや寝具に使われるなど需要が増加して世界中で使われているのです。

特徴② 耐候性
太陽光・温度・湿度・雨などの耐候性(屋外で使用した時の耐久性、変形・変色・劣化等の変質を起こしにくい性質)に優れており、屋外で長期間使用しても劣化しにくい特徴があります。日光に強く外で干しても日焼けが起こりにくいため、普段の生活で着る衣服はもちろん、スポーツ用品やアウトドア用品にも広く使われています。

上述の耐久性の特徴もあるため、丈夫で長く愛用でき、頻繁に衣服を買い換えることもなく経済的です。

特徴③ 速乾性
ポリエステルは吸水性・吸湿性が低いため、洗濯後もすぐに乾き、水による収縮がありません。洗濯物が乾きにくい季節でも、ポリエステル生地なら早く乾きます。この速乾性は機能性ウェアや、アウトドアウェアで人気があります。

反面、吸汗性・通気性もないため、汗を吸って乾燥して欲しいインナーには不向きな面もあります。綿のような天然素材のインナーと比較すると、汗をかくとベタベタして不快に感じるかもしれません。ただ、綿を混紡したり、水分発散性の高いポリエステル繊維が開発されているので、この弱点は克服されています。

特徴④ 軽量
天然素材と比べて格段に軽く、耐久性・耐候性があるため、衣服はもちろん、バッグなどの強度が必要なアイテムにも使われています。

特徴⑤ 熱可塑性
ポリエステル繊維は熱可塑性(ねつかそせい、糸や生地に熱を加えると軟化して成形でき、冷却すると固定される性質)をもち、形状記憶性が高いため、アパレルでは非常に人気があります。例えばパンツに折り目をつけたり、スカートに恒久的なプリーツをつけることに利用されています。このプリーツ加工は洗濯しても取れにくいので便利です。また、装飾的な形状とパターンをレーザーカットすることもできます。

そして、弾力回復率が高く、シワになりにくい素材でもあります。上述の速乾性(吸水性・吸湿性がない)という特徴もあるおかげで、洗濯によって濡れてもすぐに乾き、しっかり生地を伸ばして干せば縮みやシワ、型崩れを防止してくれて、洗ってノンアイロンで気軽に着用できます。ただし、熱可塑性のメリットがデメリットになることもあり、一度付いてしまったシワは取れにくくなるので注意が必要です。

自宅で洗濯ができ、アイロンいらずのイージーケアは助かりますよね。もしシワシワなまま干してしまっても、アイロンをかけることができるので、心配しないでください。

特徴⑥ 静電気
ポリエステル繊維に限らず合成繊維は、静電気を帯びやすいことも特徴で、デメリットといえます。

ポリエステル100%の服は静電気が発生しやすく、乾燥している日はホコリを吸着しやすくなります。また、髪の毛の長い方は不快に感じるかもしれません。静電気防止加工・帯電防止加工を施したり、綿などの安定した繊維と混紡することで、静電気の発生を抑えることができます。洗濯するときに柔軟剤を使用することも効果的です。

特に綿との混紡はポリコットンと呼ばれ、ポリエステル100%よりも耐久性があり、シワになりにくく、通気性に優れているので、2つの繊維のメリットが活かされています。

特徴⑦ 色落ちしやすい
ポリエステル100%の生地は特に色落ちしやすいというデメリットがあります。ただしポリエステル繊維は自宅で洗濯できるので、色落ちに注意すれば問題ありません。柄物・色物のポリエステル製品を洗濯するときは、品質表示タグを確認して、正しい洗濯方法でお手入れしてください。

ポリエステルはどんなものに使われているの?

衣服についた品質表示タグを確認すると、どの繊維がどれくらいの割合で使われているのか、チェックすることができます。ポリエステルはさまざまなところで使われていますので、その一例をご紹介しましょう。

    • 衣服(ワイシャツ、プリーツスカート、ズボン、セーター、フリース、コートやアノラックなど)
    • スポーツウェア
    • アウトドアウェア
    • 学生服
    • 和服・着物
    • インナー・肌着・靴下
    • 履物
    • レインコート
    • 洋傘
    • スーツケースやバッグ、リュック
    • シーツ、羽毛布団カバー、寝袋、布団わたなどの寝具
    • ミシン糸
    • ロープ
    • 室内装飾品
    • テキスタイル、織物、家具
    • コンベアベルト素材、シートベルト、プラスチック補強材 など

ポリエステルのお手入れ・取り扱い上の注意点

基本的にポリエステル製品は適切に扱えば丈夫で、取り扱いも簡単です。混紡している素材や加工によって洗濯方法が変わるので、必ず品質表示タグを確認してください。基本的な取り扱いやお手入れで注意する点は、主に3つあります。

1 火に近づけない
ポリエステルは熱に強いですが、可燃性で、防火性はありません。火を近づけると生地が溶けてしまう可能性があるため、注意が必要です。また、高温のものに直接触れると生地が溶ける恐れもあります(後述の「3 アイロンと乾燥機に注意」も確認してください)。

2 汚れ・ニオイに注意
ポリエステルは汚れやニオイが強いものと一緒に洗濯すると、汚れやニオイが繊維の奥に蓄積して、付いた汚れやニオイが落ちにくい傾向があります。汚れが強いものとは別に洗濯するようにしてください。また、使用する洗剤は洗浄力の強い、弱アルカリ洗剤が基本です。黒ずみがちなポリエステルをキレイに洗濯できます。

3 アイロンと乾燥機に注意
化学繊維の中では熱に強い性質はありますが、天然繊維に比べると熱による影響を受けやすく、耐熱性は高くありません。高温のアイロンでもテカリが出たり、乾燥機にかけると変形してしまう場合があります。速乾性のある繊維ですから、しっかりシワを伸ばして自然乾燥がおすすめです。どうしてもシワが気になる時は、テカリ防止の当て布をして、低温〜中温のドライでアイロンをかけるようにしてください。

現代科学の進歩で開発されたポリエステル、いかがでしたか?

さまざまな製法によって、私たちの生活に役立つポリエステルを使った新たな高機能繊維・素材が開発され続けています。素材の特徴やお手入れ方法を理解すると、お気に入りの洋服やユニフォーム、作業着を長く愛用できますので、ポリエステルの知識をぜひ皆さんの衣服の購入や保管にお役立てください。