繊維の女王・シルク – 蚕と繭から作られる絹糸の特徴と種類

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「繊維の女王」とも呼ばれるシルク(絹)。その美しい光沢と綺麗な色は人々を魅了し、日本では着物をはじめ洋服や小物など、古くから様々な製品で使われています。

絹の生産は紀元前3000年頃の古代中国で始まり、麻と並んで世界最古の繊維でもあります。中国で作られた絹は金(ゴールド)と同等の価値があるとされ、インドやペルシアに輸出されたことからシルクロード(絹の道)ができ、ヨーロッパ各国に伝播しました。当初、中国は養蚕技術を秘密にしていましたが漏れ伝わり、日本では弥生時代には既に養蚕と絹の製法が伝わっていたそうです。

現在、絹の大半は中国やインド、ベトナムで生産されています。一方、消費においてはアメリカ、ヨーロッパ、日本といった先進国に集中しています。合成繊維の技術が格段に進化し、絹に似た風合いの繊維も開発されていますが、それでも高価格で高級品である絹への根強い人気と需要は衰えていません。

絹の原料と、繭糸の構造

絹は、麻や綿と同じ「天然繊維」のひとつで、天然繊維の中でもウールなどと同じ「動物繊維」であり「タンパク繊維」です。そのため絹を燃やすと髪の毛が燃えた時と同じような臭いがします。

絹の原料は、蚕(かいこ)が作る繭(まゆ)です。絹糸作りは、蚕を育てることから始まります。桑の葉を食べて成長した蚕は、サナギになる時に自分の体を外界から守るために、口から糸(繭糸)を吐いて巣(=繭)を作ります。

この繭の繊維と屑繭(くずまゆ)からとる絹繊維が、絹糸の原料となります。

繭から繰り取った絹の糸(生糸)は、天然の動物繊維の中で唯一の「長繊維」です。1個の繭は「1本の糸」でできており、その長さは1,000~1,500mにもなります。

豆知識 : 蚕の数え方

蚕は虫ですが、数え方は「匹」ではありません。なんと「頭」を使います。一匹ではなく一頭なんですね。

昔から「蚕」は虫ではなく、有益で大切な家畜と考えられていて、大切にしていたことに由来するそうです。

「1本の糸」を断面で見てみると、実は2本のもっと細い糸が合わさって出来ていることが確認できます。2本のフィブロインという繊維の糸を、セリシンというニカワのようなタンパク質がくっつけて覆った構造で、セリシンが固い皮状になって全体の約4分の1の量を占めています。

このままでは硬い繊維(生糸)のため、石鹸水のようなアルカリ性の熱湯につけてセリシンを溶かして除去すると、絹独特の美しさとしなやかさを持った練り絹が出来上がります。

フィブロインの断面は三角形のような形をしていて、絹糸で作った生地の真珠のような光沢はこの構造が関係しています。

絹糸の作り方 - 準備と製糸工程

繭から生糸がどうやって作られるか、ご存知ですか?糸づくりの主な工程は、蚕の飼育、乾燥、製糸に分かれます。ここでは乾燥の過程から出荷までをご説明します。

  • 乾繭(かんけん)
    蚕が繭を作り上げてサナギになると、12日程で羽化して蛾となり繭に穴を開けて外へ出てきてしまいます。繭に穴が開く前に糸を取るため、そして繭の中でカビなどが発生しないように繭質保存のために、羽化前に乾繭と呼ばれる処置を行います。熱気を当ててサナギを殺して、繭の中にある水分を蒸発させて乾燥させる工程です。
  • 貯繭(ちょけん)
    乾燥させた繭は、光や湿気などの影響で変質したり、虫・カビなどの害を受けないように、繭質を保全するために冷蔵やタンクに詰めるなどして貯蔵します。貯蔵した繭は、必要な時に原料として使用していきます。
  • 選繭(せんけん)
    不良繭を選り分ける作業を、選繭といいます。蚕が作る繭は、形の大きさや繭層の厚さなどがそれぞれ異なるため、繰糸に適した繭を選別します。ここまで進むと本格的な製糸工程に入ります。
  • 煮繭(しゃけん)
    繭糸がスムーズにほぐれるように、お湯に入れて煮たり蒸気を当てて、繭の膠着した状態をゆるめていきます。
  • 繰糸(そうし)
    煮上がった繭から、繭の糸口を探し出して、糸を引いていきます。1個の繭から引いた1本の糸だけでは弱いため、数個の繭の糸口を集めて撚りかけ、糸枠に巻き取っていきます。
  • 出荷
    こうして糸枠に巻き取った生糸は糸の歪みを取り除き、白生地産地へと出荷されていきます。

繭の中には選繭で原料からはじかれた不良繭・的外繭や、繰糸の工程で屑ものが出ますが、そうした繭も捨てられることはなく、真綿や紬糸などとして使われています。

絹糸の種類

絹糸にはいくつかの種類があります。通常、絹と呼ばれているものは生糸で作られたものですが、絹糸には他にも種類があるのでご紹介します。

  • 生糸(きいと)
    繰糸(そうし)で繭糸を何本かをより合わせて1本の糸にしたものを「生糸」といい、フィラメント繊維(長繊維)として幅広く利用されています。生糸は2本の「フィブロイン」と、フィブロインの周りを覆う「セリシン」でできています。
  • 玉糸(たまいと)
    普通、蚕は1頭で1個の繭を作ります。ところが2頭以上の蚕で1個の大きな繭を作ることがあり、これを玉繭(たままゆ)と言います。玉繭から糸を繰り出すと、それぞれの糸がもつれたままで節の多い生糸となるため、「玉糸」といって生糸と区別しています。玉糸を使って生地を織り上げると、この節が特徴的な風合いになるため、シャンタン織や紬織物などに使われます。
  • 真綿(まわた)
    生糸に適さないと選別された不良繭・的外繭を、アルカリ液で処理してセリシンを除き、綿状にしてから平に引き伸ばしたものが「真綿」です。真綿は布団綿に使われたり、防寒のための衣類の中綿にも使われます。
  • 紬糸(つむぎいと)
    真綿から糸を撚り合わせて紡いだものが、紬糸です。糸車などの道具を使って紡がれた有撚のものを手紡糸(てぼうし)、手で直接糸を引き出した無撚のものを手紬糸(てつむぎいと)といいます。紬糸は結城紬など紬織物の原糸となります。
  • 絹紡糸(けんぼうし)
    繰糸に適さない繭や、生糸を製造する際に出る副蚕糸といった、「繭くず」や「くず糸」などをアルカリ液で処理して紡績した糸(短い繊維を撚り合わせて一本の糸にしたもの)を、絹紡糸といいます。「スパンシルク」とも呼ばれ、分類としては長繊維ではなく、短繊維です。紡績糸のため、生糸に比べて空気をよく含み、ふんわりとした肌ざわりと柔らかな肌触りが特長です。

絹の特徴

美しい光沢と綺麗な発色

絹の糸で織り上げられた布は、しなやかで上品な光沢があり、美しいドレープを生みます。これはフィブロインの断面が三角に近い形状をしていて、光が当たるとプリズム効果のように光沢を放つためです。大小さまざまな三角の断面によるプリズム効果は、絹の光沢をいっそう美しいものとしています。

また、絹はいろいろな染料に美しく深く染まるため、繊細な図柄を鮮やかに染め分けることができます。

優れた吸湿性・通気性・保温性

しなやかで、軽く、あたたかい。絹は吸湿性・発散性・通気性に優れているので、軽やかな風合いを持ち、天然のエアコンのような素材です。保湿性も高いため、静電気が起こりにくいのも特徴です。

繊維が細いため、肌触りも抜群です。さらに絹の繊維は微細な穴の開いた多孔質構造のため、糸が軽く、繊維の間に空気をたくさん含むことができます。そのため熱伝導率が低く、暑さ・寒さの影響を受けにくく快適です。

UV(紫外線)カット

蚕は繭の中で紫外線の影響を受けないように、繭糸には紫外線から守る機能が備わっています。そのため絹にも紫外線を吸収してカットする機能があります。そのUVカット率は90%とも報告されており、高い効果があります。

絹のデメリット

日光・蛍光灯に弱いため、白い生地は紫外線に当ると黄変する、ブルー・紫系の染料は変色しやすく、耐久性・耐候性に欠けます。

繊維が細いので摩擦に弱く、水に濡れたまま摩擦すると毛羽立ち、光沢が白っぽくなります。場合によっては色落ちしたり、雨や水などが掛かるとシミができやすい素材です。

またタンパク質を成分としているため、熱・酸・アルカリに弱い、黄ばみやすい、変色しやすい(染色堅牢度が良くない)、虫害を受けやすいというデメリットもあります。また高価で、手入れや管理に手間がかかり、取り扱いの難しい素材です。

絹の取り扱いについて

水洗いは避けてクリーニングに出す

最近では水洗いができるウォッシャブル加工の絹製品もありますが、絹製品の大半はデリケートな素材です。スレやシミ防止のため、水洗いは避けてください。汚れやシミができてしまったら、早めにクリーニングに出しましょう。もし水洗いするなら、中性洗剤を使って押し洗いをして、丁寧にタオルで脱水してから形を整えて陰干しします。

保管は光と湿気に注意

日光や蛍光灯の光で日焼け・色褪せしてしまいます。またタンパク質繊維のため、湿気が多かったり汚れがついたままだとカビや虫食いの原因になります。湿気が少なく直射日光を避けた暗い場所に保管してください。除湿剤や防虫剤も使用すると効果的です。

雨や汗に気をつける

水に濡れるとシミ(輪じみ、ウォータースポット)が発生しやすく、鮮やかな生地は色落ちしやすい素材です。雨の日に着用することは避けて、汗が多い人は汗取りパットと一緒に着ましょう。香水やヘアスプレーなどを使用する方は、絹製品につかないように気をつけてください。

摩擦は避ける

摩擦に弱く、衿・袖口・裾などが擦り切れやすい素材です。バッグや手荷物がこすれただけでスレができやすく、ホコリが付いたように白っぽく見えたり、毛羽立ちやすいので注意が必要です。特に絹製品が濡れた時に摩擦が発生しないように気をつけましょう。

絹はウェアだけじゃない!

これまではドレスや着物などフォーマルな装いや高級製品に使用されることの多かった絹ですが、最近はカジュアルな衣服にも使用されています。

    • 絹の主な用途
      衣服、和服、帯、和装用品、風呂敷、ネクタイ、スカーフ、寝具など

また、絹に含まれるアミノ酸や有効成分は美容や健康にも優れた効果があることが分かっています。絹を粉末にしたシルクパウダーを使った、健康食品や健康食品なども開発されていて、ますます活躍の場は広がっています。