コンビニでもスーパーでも自販機でも、街を歩けばどこにでもあるペットボトル。ペットボトルといえば、透明なボトルを想像する方が多いでしょう。昔は青や緑といった色のついたペットボトルがありましたが、いつの間にか見かけなくなりました *。
なぜ色付きのペットボトルがなくなったのか、ペットボトルのリサイクルの取り組みと、再生ポリエステル繊維について詳しく解説します!
* 海外で生産されて輸入されたペットボトルを除く。
リサイクルの歴史 - 透明ペットボトルの理由
ペットボトルが日本で使われ始めたのは、1977年にしょうゆ容器として採用されたことです。1982年には食品衛生法が改正されて清涼飲料容器に、1985年には酒類用容器として、2002年には乳飲料容器として使用されるようになりました。
1982年にペットボトルが清涼飲料水に認可されたものの、私たちが一般的に利用するようになったのは飲料業界が1リットル未満のボトルの使用の自主規制を撤廃した1996年以降でした。飲料業界が自主規制をしていたのは、ゴミ増加を抑制するためです。
ところが規制の対象外となる、海外から輸入された500mlの小型ペットボトル飲料が好調だったことから、1996年に自主規制が撤廃されました。
そうなると、ペットボトルのゴミが溢れかえるようになります。ゴミを減らし、資源の有効活用を図る目的で、1997年4月に容器包装リサイクル法 *が施行され、ガラスびんやアルミ缶ととともにペットボトルも再商品義務対象製品となりました。
また、ペットボトルがリサイクルされやすいように、2001年には着色ペットボトルの使用を自主的に廃止し、無色透明とすることが飲料業界で決められました。こうして私たちが手に取るペットボトルは、透明ボトルだけになったのです。
* 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律
参考: 環境省 容器包装リサイクル法関連法令
ペットボトルをリサイクルすると何になる?
容器包装リサイクル法で、メーカー企業にリサイクルが義務付けられたペットボトル。私たちの生活の中では、市町村などの行政に分別回収してもらったり、スーパーなどの店頭で回収してもらったり、コンビニや自販機に置いてある専用ゴミ箱に捨てたりしていますよね。
回収されたペットボトルの再生品にはどのようなものがあるのでしょうか?

ペットボトルは、マテリアル(物)からマテリアル(物)へと再利用(リサイクル)する、マテリアルリサイクルが行われています。マテリアルリサイクルには、水平リサイクルとカスケードリサイクルの2種類があります。
- ボトルtoボトル(水平リサイクル)
食品用の使用済みペットボトルを原料化し、新たなペットボトルに再利用(リサイクル)すること。使用済みの製品を資源として、また同じ製品にリサイクルされます。
- カスケードリサイクル
前とは別の製品や、低い品質の製品に再利用(リサイクル)すること。
カスケードリサイクルは以下のように様々な種類があり、有効活用されています。
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- シート(食品用トレイ、卵パック、下敷き・クリアファイルなど)
- 包装フィルム・ラベル(食品用パウチ、粘着ラベル素材、ラミネート包材など)
- 繊維(ワーキングウェア、白衣、アウター、インナー、バッグ、マットなど)
- 成型品(洗剤ボトル、セロテープ、定規、リサイクルボックス、ハンガーなど)
ペットボトルの原料は、石油から作られるポリエチレンテレフタレートと呼ばれる樹脂です。
Poly Ehtylene Terephthalate
この頭文字をとって、PET(ペット)といいます。
ポリエチレンテレフタレートは、石油由来のテレフタル酸とエチレングリコールを原料にして、高温・高真空下で化学反応させてつくられる樹脂のひとつです。この樹脂を溶かして、糸にしたものが繊維、フィルムにしたものが食品包装フィルム、ふくらませたものがペットボトルです。
ペットボトルの原料、ポリエチレンテレフタレートは、合成繊維の代表格・ポリエステルと同じです。つまり、作業着やインナーに使われているポリエステル繊維も、食品包装フィルムも、ペットボトルも、同じ素材から作られた兄弟なのです。

どうやって再生繊維が生まれるの?
リサイクルするために回収されたペットボトルは、どうやって繊維に再生されるのでしょうか?
回収された使用済みペットボトルは、粉砕して溶かし、ペレットにします。ペレットを高温で溶かすと、粘り気のある液体になります。この液体を「ところてん」のように小さい穴から押し出すと、糸状の繊維(再生繊維)が生まれます。再生繊維を伸ばして、集めた繊維が再生ポリエステル繊維の原綿です。この綿から糸をつむぎ、作業着やインナーなどの衣類に製品化されるのです。
現在ではケミカルリサイクル技術が実用化され、バージン原料で作った物と同等の再生ポリエステル繊維の供給が可能になっています。

繊維業界ではペットボトルをリサイクルするだけでなく、PET樹脂を構成する成分の一部をバイオ由来原料(サトウキビ)へ置き換えた繊維も開発されており、大切な資源を有効活用しながら持続可能な循環型社会の実現に貢献しています。
再生ポリエステル繊維製品は、エコマークを取得できる!
再生ポリエステル繊維を使用した作業着や制服などの衣服は、基準を満たせばエコマークを取得することができます。
衣服のエコマークの主な認定要件
-
- 製品全体(繊維部分)に対してリサイクル繊維を50%以上使用していること
- 製品への化学物質(基準で規定された化学物質)の使用については基準値を満たしていること
など
こうした環境に配慮した製品は、国の機関や地方公共団体などが優先使用するといったメリットがあるため、企業にとっても製造・販売するインセンティブがあります。

再生ポリエステル繊維の適切な管理のために
再生ポリエステル繊維は、リサイクル技術の進化とともに未使用(バージン)材料との見分けがつかなくなってきました。再生ポリエステル繊維に限らず、リサイクル製品の多くがバージン原料との差がなくなりつつあります。そこで、リサイクル製品を適切に管理するために業界基準が設定されました。それがGRSです。
GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)
製品(完成品も中間品も)のリサイクル含有物を検証し、生産で責任ある社会的、環境的、化学的慣行を検証する認証プログラムです。
GRSは、リサイクル製品に関する第三者認証の要件を設定した国際的な基準のひとつ。
リサイクル含有物を検証し、加工流通過程管理、社会や環境慣行やおよび化学規制の第三者認証の要件を設定した、国際的で自発的な完全製品基準です。社会的責任を果たした上で生産されているか、廃棄物の回収から製造、最終製品の販売までの過程を審査します。GRS認証の目標は要件を定義し、正確なリサイクル含有物の申告と適切な作業条件、および有害な環境的および化学的影響が最小化されることを保証することです。
再生ポリエステル繊維、いかがでしたか?
日本の2019年ペットボトルリサイクル率はなんと85.3%!他の国に比べても回収率・リサイクル率ともに高いそうです。ペットボトル10本あれば、上下揃いの作業着を作る再生繊維ができるそうなので、これからもリサイクルに協力していきたいですね。
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