作業靴の規格を知る 〜 災害事故や障害発生を防止するJIS規格・静電気帯電防止靴

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作業靴の規格を知る 〜 災害事故や障害発生を防止するJIS規格・静電気帯電防止靴

12月に入ってどんどん寒くなり、空気が乾燥する季節になりましたね。そうなると気になるのは、静電気。ドアノブを触ったり、服を脱いだ時に「バチッ」と痛い思いをすることがあります。冬に静電気が発生しやすい原因は、湿度が低いことです。水分は電気を通しやすいため、湿度が高いと空気に含まれる水分から静電気が素早く分散されて、帯電しにくくなります。ところが冬は湿度が下がるため、静電気が体に帯電されやすくなります。

静電気が帯電すると、大きな事故につながる危険性があることをご存知でしょうか?

総務省消防庁が発表している令和元年版 消防白書によると、危険物施設における平成30年中の火災事故の発生件数は206件。着火原因は、高温表面熱に次いで「静電気火花」が原因とされています。火災事故の多くは静電気対策を実施していなかったか、静電気対策が不十分であったと考えられます。

ガソリンや灯油を扱う時に、静電気によって火災事故が発生してしまうことがあります。また、引火のおそれがある可燃性ガスや引火性液などの化学物質を製造・使用する場合も、大規模な災害につながる危険性があります。静電気が原因で、電子デバイスなどの精密機器に障害が発生することもあります。

ところが静電気は目に見えないため、対策を忘れがちです。安全・安心に作業するために、体への帯電防止対策として「静電靴」を着用しましょう。

静電気帯電防止靴は、爆発・火災の危険から守り、精密機器の障害発生を防止する

静電気による災害事故を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

  1. 静電気の発生を抑制する(摩擦を減らす 等)
  2. 体への帯電を防止する(帯電防止服・靴の着用 等)
  3. 静電気を放電する(アースを取り伝導性を確保する 等)

静電気帯電防止靴には静電靴と導電靴があり、日本工業規格(JIS T8103:2010)が規定されています。対応国際規格は現時点で制定されていません。

静電靴は「静電気拡散性靴」のことで、上記の対策:2に該当します。一般的に販売されているスニーカーや運動靴とは異なり、体内に溜まった静電気を靴底から逃がして体への帯電を防止することで、静電気によるスパーク(火花)や火災の発生を防止します。作業者に帯電した静電気による事故や、機械設備の障害発生、製品の損傷を防ぐ靴です。

また、この規格の中では「静電気導電性靴(導電靴)」についても併せて規定されています。

静電靴の帯電防止性能による区分と種類

静電気帯電防止性能を基準として、静電靴は一般静電靴(ED)、特種静電靴(EDX)の2種類と、導電靴(EC)に分類されます。

それぞれ種類ごとに使用環境基準があり、測定温度は23±2℃と、屋外作業も想定した0℃が設定されています。また、測定温度23±2℃に対してのみ「環境区分」として相対湿度を規定しています。2010年の規格改訂において、電気の国際規格IEC規格の内容が反映され、環境区分が追加されました。

環境区分には1、2、3があり、それぞれ試験条件(温度及び湿度)が違います。常温(23±2℃)において、1:湿度12%以上、2:湿度25%以上、3:湿度50%以上と定められています。

湿度管理を行わない屋外や一般的な工場での使用には、基本的にどの区分の静電靴を選んでも問題ありません。しかし半導体や電子デバイスなどの精密機器を製造する工場などのように湿度管理を行う環境での使用には、最も厳しい環境区分である「C1」の区分で検査に合格した静電靴を選ぶ必要があります。購入前に、環境区分の確認するようにしましょう。

上記のグラフで、特殊静電気靴の電気抵抗の上限が一般静電靴よりも一桁小さいのは、より確実に静電気を防ぐためです。つまり、特殊静電靴は一般静電靴よりも帯電性能が高いのです。

また、静電靴は、静電靴(一般・特殊)・導電靴の区分のほかに、靴自体の仕様によっても3つに区分されます。

先芯の有無や、甲被材料、表底材料によって、「安全靴(記号:P)」「保護靴(記号:O)」「作業靴(記号:W)」に分類されます。

JIS T8101(安全靴)については、こちらの記事をご覧ください!
作業靴の規格を知る 〜 JIS合格品・安全靴と、JSAA認定品・プロテクティブスニーカー

このJIS規格では静電靴を使用する場所は、

①爆発または火災の危険がある場所
 ・爆発危険区域
 ・爆発高危険区域

②生産障害(電子デバイスなどの破損など)のおそれのある場所
 ・静電気放電保護区域
 ・その他生産障害発生区域
(ホコリまたは汚れの付着などによる生産障害が発生する区域))

としています。例えば、

    • ガソリンやガスなどの引火性のある化学物質の取り扱い作業
    • 塗装作業などの各種溶剤を取り扱う現場・事業所
    • 電子部品などの電子素子を取り扱う精密機器工場・製造ライン
    • OA機器の多い事務所
    • 船上作業
    • 消防作業や救急医療作業

など、静電靴は様々な現場で活用されています。

一般静電靴は「静電靴を使用する場所」の中でも、①爆発または火災の危険がある場所(爆発危険区域)と②生産障害の恐れのある場所での使用に適しています。特種静電靴は一般静電靴よりも電気抵抗の性能が高いため、一般静電の静電靴が使用できる場所に加えて①爆発または火災の危険がある場所(爆発高危険区域)での使用が可能です。

  • 爆発危険区域
    一般静電靴、特種静電靴、導電靴、どれでも選択できます。
  • 爆発高危険区域
    特種静電靴、導電靴を選択します。

より安全な静電靴をお探しなら、特殊静電靴かつ環境区分:1の静電靴が安心です。

人体の帯電防止性能は,靴の電気抵抗と床の漏れ抵抗とを合成した電気抵抗によって決まります。そのため、静電靴が十分な帯電防止性能が得るために、「靴の電気抵抗」のほかに「床の漏れ抵抗」についても規定があります。

床の漏れ抵抗とは、床と接地端子との間の電気抵抗のことで、床の漏れ抵抗が指定された値よりも大きい場合は十分な帯電防止性能が得られない可能性があります。

人体の帯電によってどのような生産障害が生じるか、また、生産障害が生じるときの帯電防止対策などについては、専門家によるリスクアセスメントをもとに決定してください。

JIS規格・静電気帯電防止靴、いかがでしたか?一般の方でもセルフガソリンスタンドを利用することや、移動販売の灯油を購入する機会があると思います。ぜひこの機会に静電靴のことを知ってくださいね。これから靴を購入される際には、ぜひ安全性が確認されているJIS規格などの合格品を検討してみてください。